器質性EDの特徴・原因・治し方
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器質性EDとは?
器質性EDとは、血管や神経の障害が原因で生じるED(勃起不全)のことです。
器質性EDは30代〜50代以上の年齢層に多く見られますが、10代〜20代の若年層でも発症の可能性はあります。
以下では、器質性EDの特徴や判断方法について紹介します。
器質性EDの特徴・定義
器質性EDは、何らかの身体的な原因により、陰茎への血流が悪くなることで生じるEDを指します。
加齢による身体機能の低下だけでなく、事故により血管や神経に損傷が生じてEDに至った場合も器質性EDに含まれます。
器質性EDを簡易的に判断する方法
器質性EDは身体機能の低下が原因で、陰茎への血流が悪化している状態です。
一方、心因性EDは精神的なストレスなどによって生じるため、特定のシチュエーションでのみEDが発症する傾向にあります。
これらの性質の違いから、夜間勃起現象や朝立ちの状態を観察することで、器質性EDと心因性EDを簡易的に見分けることが可能です。
夜間勃起現象や朝立ちは、身体的に問題がない男性であれば誰にでも起こり得る生理現象です。
すなわち、起床時に勃起が見られる場合は身体的な異常がないとされ、器質性EDではないと判断できます。
しかし、朝立ちがまったく見られない、あるいは勃起の程度が小さい場合は、器質性EDの可能性があるといえます。
簡易的に器質性EDかどうか判断するなら、まずは朝立ちの状態をチェックしてみましょう。
ただし、EDは様々な複合要因によって生じるケースが多いため、不安や疑問を生じる際は医師に相談してください。
器質性EDの原因
器質性EDは、身体機能の低下によって生じる症状です。
器質性EDの原因を細かく分けると、以下のように分類できます。
器質性EDの原因
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それぞれの原因について詳細を解説します。
動脈硬化
動脈硬化は、器質性EDの原因の一つです。
動脈硬化によって血管が硬くなると、血管は正常な拡張・収縮ができなくなります。
血流が増えた際に血管が広がらなければ、十分な血流を確保できません。
勃起は、陰茎海綿体に血液が流れ込むことによって生じるため、動脈硬化が進むと器質性EDを発症しやすくなります。
目安として、30歳を越えたあたりから動脈硬化により血流が徐々に悪化するケースが増え、それに伴い器質性EDの割合も増加する傾向にあります。
生活習慣病
生活習慣病は、器質性EDと関係のある疾患です。
動脈硬化が進行すると、高血圧症や糖尿病などを併発しやすくなります。
高血圧症の場合、血管内部の圧力が増加することで血管に負担がかかります。
その結果、さらに動脈硬化を悪化させEDに繋がるという悪循環を引き起こすでしょう。
また、糖尿病の場合、高血糖の血液が刺激となり血管に炎症が生じ、同様に動脈硬化を誘発してEDに繋がります。
このように、生活習慣病と動脈硬化は強い関連性があり、これらが併発することで器質性EDの進行が加速します。
血管の損傷
物理的に血管が損傷することによっても、器質性EDは発症します。
例えば、陰茎の隣接部位に対するがんの外科手術の際に、陰茎の血管や神経がダメージを受けてしまうと、陰茎に血液が十分に流れなくなり、器質性EDを引き起こすかもしれません。
ほかにも、不慮の事故により脊髄や骨盤を損傷することで、器質性EDに至るケースもあります。
重大な損傷により血管が完全に断たれてしまった場合は、ほとんど勃起しなくなるケースもあるため、不安を感じる場合は医師に相談しましょう。
神経障害
神経障害も、器質性EDの発症と関係があります。
健康な男性であれば、性的刺激を受けた際の神経信号が問題なく陰茎へと伝わり、勃起に至ります。
しかし、神経障害がある場合は神経信号の伝達が不十分となるため、正常な勃起に至りません。
神経障害が生じる原因となる疾患としては、てんかん、パーキンソン病、糖尿病性神経症などが挙げられます。
てんかんは、脳の神経細胞の異常により発作が引き起こされる疾患です。
性的刺激による脳内の神経信号をうまくコントロールできなくなり、器質性EDを発症します。
パーキンソン病は、脳の異常により身体の震えなどの症状が見られる疾患であり、てんかんと同様に神経信号を正常に伝える働きが抑制されます。
糖尿病性神経症は、高血糖の血液が神経を侵食することで、神経機能自体に障害を与える疾患です。
性的刺激を与えても神経機能が正しく働かなくなり、器質性EDの原因となります。
また、不慮の事故によって神経に物理的なダメージが加わった場合も、神経機能の低下を招き、器質性EDの原因となる可能性があります。
男性ホルモンの減少
男性ホルモンは、性欲や勃起力といった性機能を維持するうえで大きな役割を果たします。
したがって、男性ホルモンの量が減少すると勃起力は衰え、やがてEDを発症するケースが多いです。
男性ホルモンの減少は身体機能に関わるため、器質性EDに分類されます。
目安として、30歳以降より徐々に男性ホルモンの分泌量が低下する傾向にあります。
EDとともに、明らかに性欲が低下したなどの症状が見られる場合、男性ホルモンの減少が関係しているかもしれません。
心配な場合は医師に相談してみてください。
器質性EDの治し方
器質性EDを治すには、身体機能の障害を引き起こしている根本原因に対してアプローチする必要があります。
以下では、器質性EDの治療に向けた取り組みを8つ紹介するので、ぜひ参考にしてください。
器質性EDの治療に向けた8つの取り組み
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ED治療薬を内服する
ED治療薬を用いることで、身体機能を一時的に回復させ、陰茎の血流の増加を促すことが可能です。
性的興奮が生じた際、体内ではcGMP(Cyclic guanosine monophosphate:環状グアノシン一リン酸)という物質が分泌されることで陰茎海綿体の血管拡張を促し、勃起が引き起こされます。
一方で、性的興奮が収まるとPDE5(phosphodiesterase 5:ホスホジエステラーゼ5)という酵素がcGMPを壊して勃起を抑制します。
このように、通常は性的興奮の有無に応じてcGMPとPDE5がバランスを取り、勃起をコントロールするという仕組みです。
しかし、EDが発症すると勃起を促すcGMPの分泌量が減少します。
一方で、勃起を抑えるPDE5の分泌量は変化しないため、cGMPとPDE5のバランスが取れなくなり、結果として勃起しにくいED状態に至ります。
ED治療薬は、勃起を抑えるPDE5の働きを抑制する役割を果たすため、血管を拡張して勃起を促すcGMPを間接的に増加させることで、EDの改善に繋げることが可能です。
日本ではバイアグラ、レビトラ、シアリスなどのED治療薬があり、当クリニックで処方しています。
血流を改善する食材を取り入れる
陰茎海綿体への血流が弱まることで器質性EDを発症している場合は、血流を改善する食材を選ぶことで改善が期待できます。
ただし、食事のみで完全にEDを治すのが困難な点には注意してください。
食事は、あくまで血液をサラサラにすることで動脈硬化の予防・改善を促し、間接的に器質性EDへとアプローチするという考え方です。
血液をサラサラにする食事は「おさかなすきやね(お魚好きやね)」で覚えましょう。
おさかなすきやね | 主な食材 |
---|---|
お | お茶(緑茶、烏龍茶、ほうじ茶など) |
さ | 魚(サバ、イワシ、サンマなどの青魚) |
か | 海藻類(わかめや昆布など) |
な | 納豆 |
す | 酢(酢酸やクエン酸) |
き | キノコ類(シイタケ、キクラゲ、マイタケなど) |
や | 野菜類(ニンジン、カボチャ、ピーマンなど) |
ね | ネギ類(長ネギ、玉ネギ、にんにくなど) |
また、肥満の改善が見込める食事習慣も、EDのリスクを低下させるという報告があります。
現代人の食事は野菜などの副菜が不足しがちのため、以下のような食材を積極的に取り入れましょう。
肥満を抑えるための副菜の例
- 野菜
- 野菜
- イモ
- 豆類
- 海藻
上記を取り入れたバランスの良い食事を心がけることで、EDの予防・改善に役立ちます。
有酸素運動を行う
有酸素運動は、様々な理由からEDに有効と考えられます。
例えば、体を動かすことで肥満の解消につながって血流も良くなるため、動脈硬化ひいてはEDの改善に繋がるでしょう。
また、有酸素運動により筋肉からの男性ホルモンの分泌が促されることから、男性の性機能の改善が期待できます。
有酸素運動のやり方がわからない方は、軽いウォーキングからで構いません。
多少息が上がる程度まで、時間をかけて負荷をかけるのがコツです。
慣れてきたら、有酸素運動の種類を増やし、自分のやりやすい方法を見つけると良いでしょう。
おすすめの有酸素運動
- ウォーキング
- ランニング
- 水泳
- 縄跳び
- トランポリン
注意点として、サイクリングによる有酸素運動はおすすめしません。
有酸素運動としては確かに有効ですが、自転車に長時間座ることで、陰茎周辺などに負担がかかり、EDを悪化させる恐れがあります。
場合によっては、血管や神経に障害を与える可能性もあるため、サイクリング以外の方法で有酸素運動を行いましょう。
筋トレやストレッチを行う
筋トレやストレッチによって体を動かすことも、運動と同様に有効なED対策です。
特に勃起に関わる骨盤底筋(PC筋)を鍛えることで、勃起力の向上が期待できます。
勃起は、陰茎海綿体に血液が流れ込むことによって起こりますが、PC筋は陰茎海綿体に蓄積した血液を体内に逆流させない役割を果たします。
したがって、PC筋を鍛えることで勃起力改善だけでなく、勃起の持続時間の延長も可能です。
PC筋のトレーニング法としては、骨盤底筋体操(ケーゲル体操)が有名です。
ケーゲル体操の手順
- 呼吸しながら、ゆっくりと肛門を引き締める
- 肛門を引き締めた状態を約10秒~20秒維持する
- ゆっくりと肛門を緩め約40秒間リラックスする
- この収縮と弛緩の動きを約10回繰り返す
上記の手順を1セット(約10分)として、1日3セットから10セットを目安に行いましょう。
最初は手順が多く感じられるかもしれませんが、肛門の収縮と弛緩を繰り返す動作のみです。
また、ケーゲル体操を行う体勢は基本的に自由であり、立った状態でも座った状態でも構いません。
あるいは、仰向けになったり、リビングでくつろいだりしながら行うことも可能です。
効果に関しては、通常の筋トレと同様で即効性は期待できませんが、数ヶ月間継続することでEDの改善が見込めるでしょう。
過度な飲酒を控える
勃起には、性的刺激を受けた際の神経信号が正しく陰茎まで伝達される必要がありますが、過度な飲酒は性的興奮時の神経伝達を抑制してしまう恐れがあります。
また、アルコールは体内の脂肪の代謝を抑制するだけでなく、肝臓の中性脂肪の増加を促進するため、肥満に繋がりやすいです。
これらの理由により、アルコールの過剰摂取は器質性EDのリスクを高めます。
アルコールの摂取量が多い方は、少しずつ減らす努力をしましょう。
睡眠の質を向上させる
睡眠の質を向上させることも、器質性EDの改善に繋がります。
海外の研究によると、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の場合、EDの発症リスクが1.82倍高まることが知られています。
寝付きが悪い場合は、生活リズムを整えるところから始めましょう。
朝方に日光を浴びることで、メラトニンと呼ばれる眠気を誘発するホルモンが夜に分泌され、寝付きの改善が期待できます。
また、運動習慣を取り入れることも、不眠を解消する有効な手段です。
禁煙を心がける
タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させると知られています。
したがって、喫煙により陰茎海綿体に血液が流れにくくなり、結果としてEDを引き起こしやすいです。
くわえて、喫煙はホルモンバランスの乱れを引き起こすため、男性ホルモンの働きが不安定になり、勃起力に影響を与える可能性があります。
そもそも、喫煙はEDだけでなく健康全般に対して悪影響が大きいため、可能な限り禁煙を心がけましょう。
ICI治療を受ける
ICI治療(陰茎海綿体注射治療)とは、陰茎海綿体に薬剤を直接注射するED治療法のことです。
陰茎海綿体に本来繋がるはずの血管や神経が断たれているといった深刻な器質性EDの場合、ED治療薬では効果が見込めないため、ICI治療が有効です。
また、重度の糖尿病や心臓病の疾患を抱える場合などは、そもそもED治療薬の服用ができないため、ICI治療に移行します。
ICI治療で用いられる薬剤は、プロスタグランジンE1誘導体製剤と呼ばれる抗血小板薬です。
海外では治療を受けた方のうち、約70%~90%がED改善の効果を実感したと報告されています。
注射の際はチクッとする程度の痛みで済むため、過度な心配は必要ありません。
また、初回のみクリニックで注射法の指導を受ければ、2回目以降は自宅にて自分で注射が可能です。
器質性EDの治療における注意点
器質性EDの治療を行うにあたり、知っておくべき注意点が3つあります。
器質性EDの治療における注意点
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以下にて詳細を解説します。
動脈硬化に繋がる食事は避ける
食生活の乱れは動脈硬化を引き起こし、ひいてはEDへと繋がります。
特に以下に当てはまる食事は、EDの発症リスクを高めます。
EDの発症リスクを増加させる食事 | 代表的な食べ物・料理 |
---|---|
高カロリー食 | カツカレー、カツ丼、ピザ、カルボナーラ、スパゲッティなど |
高塩分食 | イカの塩辛、カップラーメン、インスタントラーメン、いくら・すじこなど |
高脂肪食 | クレープ、ハンバーガー、ミルフィーユ、フライドポテトなど |
高カロリー食は、肥満や糖尿病のリスクを高めます。
動脈硬化を加速させる恐れがあるため、注意が必要です。
高塩分食は高血圧症のリスクを高め、こちらも動脈硬化を引き起こします。
高脂肪食は、言うまでもなく肥満に繋がる食事です。
上記はあくまで一例です。
偏った栄養バランスは器質性EDのリスクを高めるため、健康的な食事を心がけましょう。
男性ホルモン補充療法はおすすめしない
男性ホルモンの低下が原因で器質性EDを引き起こしている場合、外部から補充すれば良いと考える方もいるでしょう。
実際、男性ホルモン補充療法(テストステロン補充療法)という治療法は存在します。
しかし、この治療法は副作用が大きいため、基本的におすすめはできません。
男性ホルモン補充療法の代表的な副作用
- 睡眠時無呼吸症候群
- 精巣の機能の低下
- 肝機能障害
- 多血症
- ニキビの増加
- 体毛の増加
- 女性化乳房
- 抑うつ症状
このように、男性ホルモン補充療法の副作用の中には、かえってEDの改善を妨げるものも存在します。
男性ホルモンの分泌を促して根本的に器質性EDを改善するのであれば、食事・運動・睡眠といった生活習慣を見直すのがおすすめです。
ICI治療は経済的な負担が大きい
ICI治療は、ED治療薬による改善が見込めない場合に用いられる有効な治療法です。
しかし、ICI治療は自由診療にあてはまるため保険が適用されず、対応するジェネリック医薬品も存在しないため、経済的な負担が大きくなる点がデメリットといえます。
一方、ED治療薬であればジェネリック医薬品が存在するため、安価に治療が可能です。
まずはED治療薬で経過観察をし、ICI治療は最終手段とすることをおすすめします。
治療の方針や方向性については、必ず医師と相談のうえ進めてください。
混合性EDの可能性もありうる
器質性EDの原因、治療法について解説しました。
EDは、複数の要因が複合的に起きているケースがほとんどです。
例えば、器質性EDと心因性EDを併発している「混合性ED」の可能性は高いといえます。
今回、器質性EDと心因性EDを簡易的に見分ける方法を解説しましたが、混合性EDの場合は、朝立ちの有無から原因を明確に特定することは困難です。
混合性EDを根本的に改善するには、生活習慣の見直しとED治療薬での治療を並行して行うのがおすすめです。
治療にあたっては、必ず医師と相談のうえ行ってください。