薬剤性脱毛症は、誰にでも起こりうる脱毛症の一つです。
何らかの疾患を治療するため、薬剤を飲んでいると、髪の毛が抜けてしまうことがあります。
最もよく知られているのは、抗がん剤(抗悪性腫瘍剤)による脱毛ですが、抗がん剤以外の薬剤で起きることもあります。
今回は、薬剤性脱毛症の症状や原因、治療方法などについて解説します。
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薬剤性脱毛症とは
薬剤性脱毛症とは、何らかの疾患を治療するため、薬剤を服用することにより、その副作用などによって髪の毛が抜けてしまう脱毛症のことです。
薬剤が関与して引き起こされる脱毛症のことを総じて薬剤性脱毛と呼ぶため、発症メカニズムが明らかではない場合が多くあります。
一般的には、薬剤の服用や投与を中止することで脱毛症状が回復するものを指します。
薬剤性脱毛症の症状
薬剤性脱毛症の症状は、ほとんど全ての髪の毛が抜け落ちたり、ヘアスタイルを工夫すれば頭皮の露出を隠すことができる程度のものまで様々です。
重度になると、眉毛や鼻毛、陰毛など全身の毛が抜けてしまうこともあります。
薬剤の種類や投与量、体調、体質などによって、症状の進行スピードや状態(レベル)は異なります。
脱毛の状態(レベル)
- 軽度:少し脱毛が気になる程度の状態
- 中等度:頭皮が見えるくらい脱毛が進行している状態
- 重度:ほとんど全ての髪の毛が脱毛してしまった状態
薬剤性脱毛症の原因
薬剤性脱毛症は、薬剤の副作用によって脱毛が引き起こされるのが原因です。
主に「抗がん剤」や「抗がん剤以外の薬剤」の使用によって引き起こされます。
抗がん剤と抗がん剤以外の薬剤で分けられるのは、脱毛を引き起こすメカニズムが異なるからです。
大きく分けて「成長期脱毛(抗がん剤)」と「休止期脱毛(抗がん剤以外の薬剤)」に分類されます。
脱毛を引き起こす可能性のある薬剤は、非常に多く存在しています。
薬剤性脱毛症の原因
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抗がん剤(成長期脱毛)
抗がん剤によって髪の毛が抜けるのは、成長期脱毛が引き起こされるからです。
成長期脱毛とは、成長期と呼ばれる周期に髪の毛の成長が止まり、髪の毛が抜けてしまうことです。
通常のヘアサイクルは、「成長期⇨退行期⇨休止期」という周期をそれぞれ一定の期間で繰り返しています。
この周期を「毛周期」と言います。
抗がん剤は、細胞分裂を抑えるよう働くため、毛を作るもとになる毛母細胞もその働きによって抑制されてしまいます。
特に、成長期の毛母細胞は、細胞分裂が非常に活発なため、抗がん剤の影響を受けやすくなっています。
そのため、抗がん剤の使用から約1週間~2週間で脱毛が始まります。
脱毛を引き起こす抗がん剤
抗がん剤を使用した場合、ほとんどの方が薬剤性脱毛症を経験することになると言われています。
しかし、全ての抗がん剤が薬剤性脱毛症を起こすわけではありません。
薬剤性脱毛症を引き起こす可能性のある抗がん剤は、以下の通りです。
抗がん剤以外の薬剤(休止期脱毛)
抗がん剤以外の薬剤を使用しても薬剤性脱毛症が起きることがあります。
抗がん剤以外の薬剤の場合は、休止期脱毛が引き起こされるためと考えられています。
休止期脱毛とは、髪が自然に抜け落ちていく休止期が長引くことで脱毛状態になったり、ヘアサイクルの休止期に髪の毛が抜けてしまうことです。
休止期脱毛による脱毛は、ゆっくりと進行するため、症状として現れるのに時間が掛かる傾向があります。
また、複数の抗がん剤以外の薬剤を飲んでいる方は、どの薬剤が薬剤性脱毛症を引き起こしているかわからないため、原因の特定が難しくなります。
脱毛を引き起こす抗がん剤以外の薬剤
抜け毛や薄毛が気になる方は、服用している薬剤の添付文書に「脱毛」や「脱毛症」などの副作用が記載されていないか確認してみましょう。
薬剤性脱毛症を引き起こす可能性のある抗がん剤以外の薬剤は、以下の通りです。
薬剤性脱毛症の治療方法
薬剤性脱毛症の治療方法は、原因となっている抗がん剤や抗がん剤以外の薬剤の使用を中止することです。
抗がん剤や抗がん剤以外の薬剤の服用や投与をやめれば、髪の毛が再び生えてくるはずです。
しかし、抗がん剤の使用を中止すると、がん治療ができず、悪化したり、命の危険もあるので、この治療方法は簡単に採用できないでしょう。
がん治療に加えて、髪の毛を失ってしまうのは辛いことですが、だからと言って髪の毛を戻すために抗がん剤の服用や投与をやめることはできないのです。
辛いときは、医師や看護師に相談したり、悩みを聞いて貰いましょう。
また、病院によっては、がん患者達のグループがあり、悩みを共有できることがあります。
1人で悩まないで、SOSを出したり、繋がりを探すことが大切です。
他にも、かつらやウィッグを使用することで、投薬期間を乗り越える方法があります。
最近では、自然に見える医療用ウィッグを簡単に手に入れることができます。
抗がん剤以外の薬剤も、使用を中止することが難しいものばかりです。
血圧や血糖値、うつ病を抑制する薬剤は、長期間服用し続けなければ効果はありません。
そのため、医師の許可が下りるまで、服用や投与を続けなければなりません。
「薬剤の使用を中止すれば髪の毛が再生するが、中止は難しい」というジレンマは、抗がん剤と同じです。
まとめ~「あれ?」と思ったらすぐに相談を~
何らかの薬剤を服用し始めて、抜け毛が増えてきたなと感じたら、すぐに医師に相談してください。
薬剤を処方している医師であれば、その脱毛が薬剤によるものなのか、そうでないのかがわかるはずです。
そして、今後どうするべきか教えてくれるはずです。
疾患の状態や体調によっては、しばらく薬剤の服用や投与を中止し、髪の毛の再生を待つように言われるかもしれません。
注意点としては、自己判断で薬剤の服用や投与を中止してはいけないということです。
どんな薬剤も、脱毛という症状を引き起こしながら、疾患を治すために効果を発揮しています。
薬剤性脱毛症が疑われる場合は、かかりつけの病院やクリニックの医師に相談することが大切です。
スタッフより
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