ED(勃起不全)は、陰茎の血管や神経が直接損傷することによる「器質性ED」や精神的なストレスによる「心因性ED」だけが原因ではありません。
薬剤の副作用によって引き起こされる「薬剤性ED」というEDも存在します。
20代の若い世代でも常用している薬剤によっては、薬剤性EDを引き起こす可能性があります。
今回は、薬剤性EDを引き起こす可能性のある薬剤(有効成分)について解説します。
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薬剤性EDとは?
薬剤性EDとは、何らかの疾患治療のため、日常的に服用している薬剤の副作用によって勃起ができなくなったり、勃起が不十分になることです。
陰茎自体に問題が無なくても、薬剤の副作用が原因でED(勃起不全)になることがあります。
そのため、薬剤性EDは、特定の薬剤を常用している方であれば、誰でも年齢に関わらず発症する可能性があります。
降圧剤や抗うつ薬などが薬剤性EDを引き起こす可能性のある薬剤として知られています。
ただし、副作用の発現には個人差があるため、EDを発症するかどうかも人によって異なります。
また、薬剤によっては、添付文書に副作用として「勃起不全」などと明記されていないことがあります。
病院やクリニックなどの医療機関で処方を受ける際に、副作用の「勃起不全」について医師から伝えられないことも多々あります。
薬剤性EDは、服用している薬剤の種類を変えたり、薬剤の服用を中止することで改善できますが、疾患の状態によっては難しいこともあります。
薬剤性EDが疑われる症状が現れた場合は、医師との相談によって服用する薬剤の調整を行わなければなりません。
薬剤性EDを引き起こす可能性のある薬剤
実際に薬剤性EDを引き起こす可能性のある薬剤を種類別にご紹介します。
薬剤の種類
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降圧剤
降圧剤とは、血圧を下げる作用によって高血圧や狭心症を治療し、心血管疾患などを予防するために使用される薬剤です。
降圧剤には、血圧を下げる作用の仕組みによって、大きく分けて5種類存在します。
降圧剤の種類
- カルシウム拮抗剤
- α遮断剤
- β遮断剤
- 利尿剤
- ACE阻害剤(アンジオテンシン変換酵素阻害剤)
高血圧や狭心症の治療に使用される降圧剤の中には、薬剤性EDを引き起こす可能性のある薬剤があります。
しかし、降圧剤が薬剤性EDを引き起こす明確なメカニズムは、はっきりと分かっていません。
降圧剤による血圧の低下は、陰茎への血流量を低下させ、EDの危険因子(リスクファクター)になるためとされています。
特に、動脈硬化が進行している方が降圧剤を服用すると薬剤性EDを引き起こしやすいと言われています。
薬剤性EDを引き起こす可能性のある具体的な降圧剤は、以下の通りです。
精神神経薬
精神神経薬とは、うつ病(気分障害)や統合失調症などの精神疾患を治療するために使用される薬剤の総称です。
うつ病の治療薬の場合は「抗うつ薬(抗不安薬)」と呼ばれ、統合失調症の治療薬の場合は「抗精神病薬(向精神薬)」と呼ばれます。
また、双極性障害の治療薬の場合は「気分安定薬」と呼ばれることもあります。
さらに、抗うつ薬には、脳内の神経伝達物質への作用の仕方によって、大きく分けて5種類存在します。
抗うつ薬の種類
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
- SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
- NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)
- 三環系抗うつ薬
- 四環系抗うつ薬
その他、うつ病治療には「睡眠薬(睡眠導入薬)」が用いられることもあります。
精神疾患を治療するために使用される抗うつ薬や睡眠薬、抗精神病薬、気分安定薬などの中には、薬剤性EDを引き起こす可能性のある薬剤があります。
抗うつ薬の場合、基本的に中枢神経(脳や脊椎にある神経)に存在する「セロトニン」「ドーパミン」「ノルアドレナリン」などの神経伝達物質に作用します。
抗うつ薬によって、これらの神経伝達物質のバランスが大きく乱れることで、性欲減退やEDを引き起こしてしまうのです。
そして、抗精神病薬の中には、性欲減退やEDを引き起こすとされる「高プロラクチン血症」という疾患を招く薬剤もあります。
薬剤性EDを引き起こす可能性のある具体的な精神神経薬は、以下の通りです。
注意欠陥・多動性障害治療薬(ADHD治療薬)
注意欠陥・多動性障害治療薬(ADHD治療薬)とは、ADHD(注意欠陥・多動性障害)を治療するために使用される薬剤です。
「中枢神経刺激薬」や「選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬」と呼ばれることもあります。
ADHD(注意欠陥・多動性障害)の治療に使用される注意欠陥・多動性障害治療薬の中には、薬剤性EDを引き起こす可能性のある薬剤があります。
精神神経薬同様、中枢神経に存在する「ノルアドレナリン」などの神経伝達物質に作用するため、結果的にEDを引き起こしてしまうのです。
薬剤性EDを引き起こす可能性のある具体的な注意欠陥・多動性障害治療薬は、以下の通りです。
抗アンドロゲン薬(抗男性ホルモン薬)
抗アンドロゲン薬(抗男性ホルモン薬)とは、前立腺肥大症や前立腺肥がんを治療するために使用される薬剤です。
単純に「前立腺肥大症治療薬」や「前立腺がん症治療薬」と呼ばれることもあります。
前立腺肥大症や前立腺肥がんの治療に使用される抗アンドロゲン薬の中には、薬剤性EDを引き起こす可能性のある薬剤があります。
男性ホルモンの一種である「テストステロン」は、男性の性欲や勃起機能に大きな影響を与えています。
抗アンドロゲン薬は、そのテストステロンの分泌を抑える作用があるため、副作用としてEDを発症することがあるのです。
基本的には、抗アンドロゲン薬の服用を中止すれば、テストステロン値は徐々に回復するので、EDも改善されます。
しかし、高齢者の場合は、その回復速度が遅かったり、人によっては服用前のレベルまで回復しないこともあります。
薬剤性EDを引き起こす可能性のある具体的な抗アンドロゲン薬は、以下の通りです。
脂質異常症治療薬(HMG-CoA還元酵素阻害薬)
脂質異常症治療薬(HMG-CoA還元酵素阻害薬)とは、脂質異常症(高脂血症)を治療するために使用される薬剤です。
そのため「高脂血症治療薬」と呼ばれることもあります。
脂質異常症を治療するために使用される脂質異常症治療薬の中には、薬剤性EDを引き起こす可能性のある薬剤があります。
脂質異常症治療薬は、肝障害を悪化させることがあり、肝臓の機能を低下させる原因になります。
肝臓の機能が低下すると、代謝の低下に繋がるので、内臓脂肪が増えて体重が増加したり、肥満になりやすくなります。
そして、肥満は男性ホルモン(テストステロン)を減少させる大きな要因となり、結果として勃起機能も悪化してしまうのです。
薬剤性EDを引き起こす可能性のある具体的な脂質異常症治療薬は、以下の通りです。
抗痙縮薬
抗痙縮薬とは、GABA受容体作動薬の一種で、脳卒中の後遺症や脊髄損傷による痙縮(けいしゅく)を治療するために使用される薬剤です。
痙縮とは、筋肉の緊張によって、手足が動かしにくくなったり、勝手につっぱったりしてしまう状態のことです。
痙縮を治療するために使用される抗痙縮薬の中には、薬剤性EDを引き起こす可能性のある薬剤があります。
バクロフェンを含む抗痙縮薬は、EDを引き起こす副作用が確認されています。
特に、バクロフェン髄腔内投与療法(Intrathecal Baclofen:ITB)という脊髄髄液腔内(脊髄神経の近く)に手術でカテーテルを挿入して、持続的にバクロフェンを注入する特殊な治療方法では、高確率でEDを発症することが分かっています。
薬剤性EDを引き起こす可能性のある具体的な抗痙縮薬は、以下の通りです。
まとめ~薬剤性EDは誰にでも起こりえる~
長期間、何らかの薬剤を服用し続けている方は、薬剤性EDに気を付けましょう。
薬剤性EDは、これまで紹介した薬剤を服用している方なら、誰でもどの世代でも発症する可能性があります。
「まだ20代だからEDは関係ない」と思わないようにしましょう。
薬剤性EDは、薬剤の中止や減量、変更などによって改善される可能性が高いとされています。
しかし、薬剤性EDを懸念して、自分の勝手な判断で服用量を変更したり、服用を中止するのは大変危険です。
怪しい症状が見られた場合は、必ず医師に相談するようにしましょう。
薬の副作用を十分に確認し、医師と話し合うことが大切です。
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